これまでのシリーズでは、基本的に「1つの Claude Code に指示を出して作業してもらう」形を扱ってきました。Subagents でも、別室の作業担当に重い調べものを丸投げし、結果の要約だけを受け取るという分業を見ました。今回扱う Agent Teams(エージェントチーム) は、その一歩先——複数の Claude Code を「チーム」として同時に動かし、互いに連携させる仕組みです。
このシリーズ(全13回+番外編・拡張編)
- 基礎 ― 全体像と拡張機能の地図
- Skills(学習編)― 繰り返す手順を覚えさせる
- Skills(実践編)― 作って、つまずいて、直す
- Subagents(学習編)― 作業を別の文脈に切り出す
- Subagents(実践編)― 温泉宿を調べて比較する
- Hooks(学習編)― 特定のタイミングで自動実行する
- Hooks(実践編)― 編集したら自動でチェックを走らせる
- MCP(学習編)― 外部サービスへの接続口
- MCP(実践編)― Google ドライブ連携でつまずいた話
- Plugin(学習編)― 作った部品をひとつの箱にまとめる
- Plugin(実践編)― 便利設定を箱に詰めて配る
- Marketplace(学習編)― 箱を並べて配る
- Marketplace(実践編)― お店に公開し、取り込む
- 番外編 ― 拡張機能の選び方チートシート
- 拡張編① Agent Teams(学習編)― 複数のAIをチームで動かす(この記事)
- 拡張編② Agent Teams(実践編)― 3人チームで多角的にレビューする
Agent Teams とは ― リーダーとチームメイトの分業
Agent Teams は、複数の Claude Code を同時に立ち上げ、ひとつのチームとして協調させる機能です。役割は大きく2つに分かれます。
- リーダー(Team Lead) あなたが話しかける本体。全体を管理し、タスクを切り分けてチームメイトに割り当て、上がってきた結果をまとめて報告する。
- チームメイト リーダーから割り当てられたタスクを、それぞれ別々に・同時に進める実働メンバー。
イメージは、まさに本物のチームです。リーダーが全体の段取りをつけ、メンバーがそれぞれの持ち場を進め、共有のタスクリストを見ながら自分たちで調整する。難しいプログラミングの知識は要らず、自然な日本語で「3人のチームを作って、こう分担して」と伝えるだけで動き出します。
どんな機能か ― できることの全体像
Agent Teams で押さえておきたい要素は次のとおりです。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| チーム生成 | 自然な日本語で「○人のチームを作って」と頼むとリーダーがメンバーを立てる |
| 並列実行 | 各メンバーが別々のタスクを同時に進める |
| 共有タスクリスト | 誰が何を担当しているかをチーム内で共有し、自律的に調整する |
| メンバーの確認 | 立ち上がったメンバーが画面に一覧で並び、各自の作業画面を切り替えて直接やり取りできる |
| Plan Approval | メンバーが作業を始める前に「計画」を提出させ、リーダー(あなた)が承認してから着手させる |
| 結果の統合 | 各メンバーの成果が出そろったら、リーダーが1つのレポートにまとめる |
とくに Plan Approval(プラン・アプルーバル。着手前に計画を承認させる仕組み) は実務で効きます。いきなり手を動かされる前に、「これからこう進めます」という計画を見せてもらえます。方向がズレていれば、作業を始める前に止められます。複数メンバーが同時に動くからこそ、最初の方向合わせが仕上がりの質を左右します。
SubAgent との違い ― どちらを使うべきか
これまでのシリーズで SubAgent を学んだ方のために、両者を並べて整理します。
| 観点 | SubAgent | Agent Teams |
|---|---|---|
| たとえると | 上司が部下に頼み、結果だけ受け取る | メンバー同士が相談しながら一緒に働く |
| やり取り | 一方向(結果を返すだけ) | 双方向(メンバー間でメッセージ交換) |
| 調整方法 | メインの Claude Code が全部管理 | 共有タスクリストで自分たちで調整 |
| コスト | 低い | 高い(メンバー1人あたり数倍) |
| 向く場面 | 結果だけ欲しい集中タスク | 議論・協調が必要な複雑な作業 |
どんな時に使うか ― 向いている作業
Agent Teams が活きるのは、1つの題材を、独立した複数の視点で同時に詰めたいときです。具体例を挙げます。
- 多角的レビュー 同じプロジェクトを「使いやすさ」「技術的な正確さ」「不足の洗い出し」など別々の観点で同時にチェックさせる。
- 競合仮説デバッグ 1つのバグに対し、メンバーごとに異なる原因仮説を立てて並行調査し、最も可能性の高い原因を絞り込む。
- 多角的アイデア探索 新しい企画を「ユーザー体験」「技術設計」「反対意見(あえて弱点を突く役)」の3視点で同時に検討し、最後に統合判断する。
いずれも共通するのは、各メンバーの作業が互いに独立していること。並行して進めても衝突せず、最後にリーダーが束ねれば1つの結論になる——そういう仕事ほど、チーム化の効果が大きくなります。
逆に、向かない作業
- 単純な1本道の作業 分担する意味が薄く、SubAgent や単体の方が速くて安い。
- 同じファイルを複数人で編集する作業 Agent Teams にはファイルのロック機能がありません。同じファイルを同時に書くと、後から書いた方が上書きしてしまいます。編集を伴うなら「メンバーAはこのフォルダ、Bはこのフォルダ」と担当を分けるのが鉄則です(読むだけのレビューなら問題なし)。
有効化の前に知っておくこと ― 実験的機能
Agent Teams は実験的な機能(お試しで提供中の、まだ発展途上の機能)として用意されていて、初期状態では無効です。有効にするには、~/.claude/settings.json という設定ファイルに目印を1行足します。とはいえ、自分でファイルを開く必要はありません。Claude Code に「Agent Teams を有効にして」と頼めば書き込んでくれます(具体的な手順は実践編で)。
設定を足したら Claude Code を再起動すれば反映されます。ただし、実験的機能ゆえの“クセ”も押さえておきましょう。
① コストが高い——チームメイト1人あたり、通常の数倍のトークン(AIが処理する文章量の単位。利用料の目安になります)を消費します。最初は2〜3人の小さなチームで、レビューやリサーチなど「読むだけ」の作業から始めるのが安全です。
② セッションを再開しても復元されない——いったん閉じるとチームメイトは消えます。必要なら作り直してください。
③ 権限待ちで止まることがある——メンバーが操作の承認を待って待機する場合があります。リーダー側に戻り、承認を求められていないか確認します。
▶ 実践編につづく
次回は、「Agent Teams を有効にして」と頼むところから、2人チームの肩慣らし → 3人チームでの多角的レビュー → 並列でのアイデア探索まで、すべて自然な言葉で指示して確かめます。Plan Approval を使った承認フローも実演します。
Agent Teams(実践編)― 3人チームで多角的にレビューする →まとめ
- Agent Teams はリーダー+チームメイトで仕事を分担し、同時並行で協調させる仕組み。
- SubAgent が一方向の委任なのに対し、Agent Teams はメンバー同士が連携する双方向。その分コストは高い。
- 向くのは多角的レビュー・競合仮説デバッグ・アイデア探索など、独立した複数視点で同時に詰める作業。
- 実験的機能なので、小さく・読むだけのタスクから。同一ファイルの同時編集は避け、担当を分ける。