「データガバナンスにはCDO(最高データ責任者)が必要」とよく言われます。しかし、CDOを置いている中小企業はほとんどありません。では、CDOがいなければデータガバナンスはできないのでしょうか。答えは「ノー」です。本記事では、CDO不在の組織でデータガバナンスをどう進めるかを解説します。

CDO不在は中小企業では当然

CDO(最高データ責任者)は、データ戦略全体を統括する意思決定者の役職です。専任のCDOを置けるのは、潤沢なリソースを持つ大企業に限られます。中小企業でCDOがいないのは、むしろ当然のことです。

重要なのは、「CDOがいないからデータガバナンスができない」と諦めないことです。CDOという役職そのものより、CDOが担う機能を、既存の人材や外部の力で代替できればよいのです。形にこだわらず、機能を満たす現実的な方法を考えましょう。

CDO機能を代替する2つの方法

中小企業でCDOの機能を代替するには、主に2つの方法があります。

  • ① 兼務担当者の設置:IT部門の責任者・DX推進担当者・経営企画担当者などが、データガバナンスの推進責任を兼務する。
  • ② 外部専門家の活用:データガバナンスの専門コンサルタントが、伴走支援する形で関わる。

多くの中小企業では、この2つを組み合わせるのが現実的です。社内に推進する兼務担当者を置きつつ、専門的な部分は外部の知見を借りる。この形なら、CDOがいなくてもデータガバナンスを前進させられます。

兼務担当者を機能させるには

兼務担当者を置く場合、注意すべきは「兼務だから片手間でよい」とならないことです。本業の合間にやる扱いだと、データガバナンスは後回しにされ、進みません。兼務であっても、その役割を正式なミッションとして位置づけることが重要です。

誰がデータガバナンスを推進するのかを明確にし、その活動に必要な時間を確保する。そして、その役割を組織として認知することで、兼務担当者は動きやすくなります。曖昧な「ついで仕事」ではなく、明確な役割として与えることが、兼務を機能させる前提です。推進担当者に求められる資質はAI推進担当に誰を選ぶか——経営者が任命時に見るべき視点も参考になります。

最も重要なのは「権限と経営層の支持」

CDOがいるかどうかより、はるかに重要なのが、データガバナンスを推進する担当者に「権限」と「意思決定者の支持」があるかです。これがなければ、誰が推進しても各部門の協力は得られません。

データガバナンスは、部門を横断する取り組みです。権限のない担当者が「データのルールを守ってください」と言っても、各部門は動きません。意思決定者が推進担当者に明確なミッションと権限を与え、「これは会社として取り組むことだ」という姿勢を示すこと——これが、CDO不在でもガバナンスが機能する最大の鍵です。役職の有無より、権限と支持があるかが本質です。

外部専門家を上手に使う

もう一つの選択肢である外部専門家の活用は、社内に専門知識がない場合に有効です。データガバナンスの設計や、つまずいたときの相談相手として、外部の知見を借りられます。

ただし、外部に丸投げするのは禁物です。外部専門家は設計や助言を支援できますが、実際の運用は社内で担う必要があります。外部の力を借りながら、社内にノウハウを蓄積し、徐々に自走できるようにしていく——この姿勢で外部専門家を使うことが、CDO不在の組織がデータガバナンスを根づかせる現実的な道です。

CDO不在での推進チェックリスト

  • CDO機能を代替する兼務担当者を決めたか
  • その役割を正式なミッションとして位置づけたか
  • 推進に必要な時間を確保したか
  • 担当者に明確な権限を与えているか
  • 意思決定者が明確に支持しているか
  • 外部専門家を活用しつつ社内にノウハウを蓄積しているか

CDO不在の組織が陥りやすい落とし穴

CDO不在でデータガバナンスを進める際、陥りやすい落とし穴があります。あらかじめ知っておくことで、回避できます。

  • 担当者の孤立:推進担当が一人で抱え込み、各部門の協力を得られず疲弊する。
  • 権限のなさ:権限が与えられず、「お願い」ベースでしか動けない。
  • 意思決定者の無関心:意思決定者が他人事で、取り組みが後回しにされる。
  • 外部丸投げ:外部に任せきりで、社内にノウハウが残らない。

これらの落とし穴は、いずれも「推進する人を孤立させ、力を与えない」ことから生じます。CDOという役職がなくても、推進担当を組織として支え、権限を与え、意思決定者が関与する体制があれば、これらの落とし穴は避けられます。

「小さく始めて実績を作る」戦略

CDOのような強力な推進役がいない中小企業では、いきなり全社的なデータガバナンスを目指すと、推進力不足で頓挫しがちです。現実的なのは、小さく始めて実績を作り、その実績をテコに展開を広げる戦略です。

まず、最も困っている一つのデータ課題に絞って取り組み、目に見える成果を出します。「データを整えたら、こんなに業務が楽になった」という実績ができれば、それが意思決定者の関心を引き、各部門の協力を得る材料になります。権限も支持も、最初から十分に得られるとは限りません。小さな成功を積み重ねることで、徐々に推進力を獲得していく——これが、CDO不在の組織がデータガバナンスを根づかせる現実的な道筋です。小さく始める考え方は中小企業向けデータガバナンスの現実的な始め方もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 誰を兼務担当者にすべきですか?
A. IT部門の責任者、DX推進担当、経営企画担当など、データと業務の両方を理解できる人が適任です。技術力だけでなく、部門間を調整できるコミュニケーション力も重要です。意思決定者に近い立場の人だと、権限も得やすくなります。

Q. 兼務だと本業が忙しくて進みません。
A. 役割が「ついで仕事」になっているのが原因です。データガバナンスの活動に必要な時間を正式に確保し、その役割を評価に組み込むことで、優先度が上がります。意思決定者が重要性を示すことも欠かせません。

Q. 外部コンサルに任せれば社内に担当者は不要ですか?
A. 不要にはなりません。外部は設計や助言を支援できますが、日々の運用は社内で担う必要があります。外部を活用しつつ、社内に推進役を置き、ノウハウを蓄積していくことが、持続的なガバナンスにつながります。

Q. 将来的にCDOを置くべきですか?
A. データ活用が事業の中核になり、専任で統括する必要が出てきた段階で検討すればよいでしょう。最初からCDOを目指す必要はなく、まずは兼務担当者と権限・支持の体制でデータガバナンスを進めることが現実的です。

Q. 権限がないまま推進を任されました。
A. まず意思決定者に、データガバナンスには権限が必要であることを説明し、明確なミッションと権限の付与を求めましょう。権限のない推進は各部門の協力を得られず、形骸化します。意思決定者の支持を取り付けることが先決です。

まとめ

CDO不在でも、データガバナンスは進められます。CDOの機能を、兼務担当者と外部専門家の組み合わせで代替しましょう。最も重要なのは、役職の有無ではなく、推進担当者に権限と意思決定者の支持があること。これがあれば、CDOがいなくてもガバナンスは機能します。

DSB Consultingでは、CDO不在の組織のデータガバナンスを伴走支援しています。相談したい方はデータガバナンス支援をご覧ください。