データ活用を、IT部門に任せるべきか、業務部門が担うべきか——組織でよく議論になるテーマです。結論を先に言えば、どちらか一方では不十分で、両者の協働が不可欠です。本記事では、IT部門と業務部門それぞれの強みと限界を踏まえ、中小企業に合った推進体制を解説します。

なぜ担当部門が問題になるのか

データ活用は、技術と業務の両方にまたがる取り組みです。そのため「技術だからIT部門」「業務だから業務部門」と、どちらが主導すべきかで意見が分かれます。担当が曖昧なまま進めると、責任の所在が不明確になり、活用が停滞します。

この問いに答えるには、データ活用に必要な力が何かを分解する必要があります。技術的な構築・運用の力と、業務の文脈を理解する力。両方が揃って初めてデータ活用は成立します。

IT部門の強みと限界

IT部門の強みは、システムの構築・運用やデータの取り扱いといった技術面です。データを集め、整え、安全に管理する仕組みは、IT部門の得意分野です。技術的な土台づくりは、IT部門が担うのが自然です。

一方の限界は、業務の文脈の理解です。どのデータが事業にとって重要か、どんな分析が現場に役立つかは、IT部門だけでは判断しきれません。技術はあっても、それを何に使うかは業務側の知見が要ります。

業務部門の強みと限界

業務部門の強みは、現場の業務を熟知していることです。どんなデータが必要で、どう使えば業務が良くなるかを、最もよく知っています。データ活用の「目的」を定義できるのは業務部門です。

限界は、技術面です。データを集めて整え、安全に管理する仕組みを自前で作るのは、業務部門だけでは難しいことが多いものです。やりたいことは分かっても、それを実現する技術が伴わないのが業務部門の課題です。

協働が不可欠な理由

IT部門と業務部門は、それぞれ相手にない強みを持ち、相手の限界を補えます。業務部門が「何をしたいか」を定義し、IT部門が「どう実現するか」を担う。この協働があって初めて、データ活用は実を結びます。

どちらか一方に任せると、必ず片方の力が欠けます。IT部門だけだと使われない仕組みができ、業務部門だけだと技術が伴わず頓挫する。両者を組み合わせることが、データ活用の成功の前提です。

協働を機能させる仕組み

協働は、ただ「協力しよう」と掛け声をかけるだけでは機能しません。両部門が定期的に対話する場を設け、業務部門が要望を出し、IT部門が実現方法を提案する。このやり取りを回す仕組みが必要です。

また、両部門の言葉の違いを埋めることも大切です。業務部門の課題を技術の言葉に、技術の制約を業務の言葉に翻訳する。この橋渡しがあると、協働は格段にスムーズになります。

推進役(橋渡し役)を置く

協働を成功させる鍵は、IT部門と業務部門の橋渡しをする推進役を置くことです。両方の言葉を理解し、調整できる人がいると、協働が円滑に進みます。この役割は、データ活用の成否を左右する重要なポジションです。

中小企業では、専任の推進役を置く余裕がないこともあります。その場合でも、誰かがその役割を兼任することが望ましいものです。橋渡し役の不在が、協働が機能しない最大の原因になりがちです。

中小企業ならではの体制

大企業のように部門が明確に分かれていない中小企業では、むしろ協働しやすい面もあります。担当者同士の距離が近く、部門の壁が低いからです。この近さを活かせば、機動的なデータ活用が可能になります。

一方で、人手が限られるため、一人が複数の役割を兼ねることになります。技術にも業務にも明るい人材は貴重で、そうした人を中心に据えるか、外部の力を借りるかの判断が必要になります。

外部の力で体制を補う

社内にIT・業務の両方の力が十分にない場合は、外部の専門家を活用して体制を補う選択肢があります。技術面を外部に支援してもらい、業務側の知見は社内が提供する。この組み合わせで、不足を補えます。

ただし、業務の目的定義は社内が主導すべきです。外部に丸投げすると、自社の事業に合わない活用になりがちです。外部は技術や進め方を補う存在と位置づけ、目的は社内が握ることが大切です。

経営が体制を後押しする

IT部門と業務部門の協働は、現場の努力だけでは進みにくいことがあります。部門間の利害や優先順位が絡むためです。経営が「データ活用は両部門で進める」と方針を示し、推進役を支えることが、協働を機能させます。

データ活用の体制は、組織横断の課題です。だからこそ、組織横断の権限を持つ経営の関与が効きます。経営が体制づくりを後押しすることで、IT部門と業務部門の協働が、組織の力として定着します。

データ活用の推進体制チェックリスト

  • IT部門と業務部門の協働体制があるか
  • 業務部門が活用の目的を定義しているか
  • IT部門が技術的な実現を担っているか
  • 両部門の橋渡しをする推進役がいるか
  • 部門間で定期的に対話する場があるか
  • 経営が体制づくりを後押ししているか

よくある質問

Q. データ活用はIT部門と業務部門どちらが担うべきですか。
A. どちらか一方では不十分です。業務部門が目的を定義し、IT部門が実現を担う協働が不可欠です。

Q. IT部門の強みと限界は。
A. 強みは構築・運用などの技術面、限界は業務の文脈理解です。技術はあってもそれを何に使うかは業務側の知見が要ります。

Q. 業務部門の強みと限界は。
A. 強みは現場業務の熟知で活用の目的を定義できること、限界は技術面です。やりたいことを実現する技術が伴いにくいのです。

Q. なぜ協働が必要なのですか。
A. 互いの強みが相手の限界を補うからです。一方だけだと使われない仕組みか技術の伴わない頓挫のどちらかになります。

Q. 協働を機能させるには。
A. 定期的に対話する場を設け、要望と実現方法をやり取りする仕組みが必要です。掛け声だけでは機能しません。

Q. 推進役は必要ですか。
A. 重要です。両部門の言葉を理解し調整する橋渡し役がいると協働が円滑に進みます。不在が協働の失敗の主因になりがちです。

Q. 中小企業ではどうですか。
A. 部門の壁が低く協働しやすい面があります。一方で人手が限られ一人が複数役割を兼ねるため、人材の見極めが必要です。

Q. 外部の力は使えますか。
A. 使えます。技術面を外部に補ってもらえます。ただし業務の目的定義は社内が主導し、丸投げは避けてください。

Q. 経営は何をすべきですか。
A. 両部門で進める方針を示し推進役を支えます。部門間の利害が絡むため、組織横断の権限を持つ経営の後押しが効きます。

Q. 体制が決まらず活用が進みません。
A. 担当の曖昧さが停滞を招きます。業務とITの役割を分け、橋渡し役を置き、経営が後押しすることで前進します。

まとめ

データ活用の担当は、IT部門か業務部門かの二択ではなく、両者の協働が不可欠です。業務部門が目的を定義し、IT部門が技術的に実現する。互いの強みが相手の限界を補い合います。

協働を機能させるには、両部門の橋渡しをする推進役を置き、定期的な対話の場を設け、経営が後押しすることが鍵です。中小企業の部門の近さを活かし、機動的な体制を築いてください。

あわせて部門横断のデータ連携を実現するための組織設計データ基盤整備を担当者一人に任せてはいけない理由データ活用を阻む「サイロ化」の構造と解消策もご覧ください。体制づくりはデータガバナンス支援でご相談いただけます。