専用システムを構築せず、既製のSaaS(クラウドサービス)だけでデータ基盤を完結できないか——コストと手間を抑えたい中小企業にとって、自然な発想です。結論から言えば、多くの場合かなりの部分はSaaSで賄えますが、限界もあります。本記事でその境界線を解説します。
SaaSとは何か、なぜ魅力的か
SaaSとは、インターネット経由で利用する既製のソフトウェアサービスです。自前で構築せず、月額料金で使えます。販売管理、会計、顧客管理、データ可視化など、さまざまなSaaSが提供されています。
SaaSの魅力は、初期投資が小さく、すぐ使い始められ、保守を事業者に任せられることです。情報システムの人手が限られる中小企業にとって、自前構築より圧倒的に手軽な選択肢になります。
SaaSで賄える範囲
実際、中小企業のデータ基盤の多くの部分は、SaaSで賄えます。各業務をSaaSで運用し、それらのデータを集約・可視化するSaaSを組み合わせれば、自前のシステムを作らずにデータ活用ができます。
一般的な業務であれば、それに対応するSaaSが存在します。標準的なやり方で業務を回せる企業ほど、SaaSだけで完結できる可能性が高まります。まずSaaSで実現できないかを検討する価値は十分にあります。
SaaSの限界その一:独自要件への対応
SaaSは既製品ゆえに、自社独自の特殊な要件には対応しきれないことがあります。標準機能から外れた独自の業務フローや、特殊な計算ロジックは、SaaSでは実現できない場合があります。
ここで重要なのは、自社の要件が本当に独自である必要があるかを問い直すことです。独自にこだわるあまりSaaSを諦めるより、業務をSaaSの標準に寄せられないかを考えるほうが、結果的に楽なこともあります。
SaaSの限界その二:連携の壁
複数のSaaSを使うと、それらの間でデータを連携させる必要が生じます。SaaS同士が標準で連携できれば問題ありませんが、できない場合は、連携の仕組みを別途用意することになります。
連携が貧弱なSaaSばかりを選ぶと、データが「島」になって孤立し、結局手作業のコピペが発生します。SaaSを選ぶ際は、他のサービスとの連携のしやすさを重視することが、完結度を高める鍵になります。
SaaSの限界その三:データの一覧性
各業務を別々のSaaSで運用すると、データがサービスごとに分散します。横断的に分析したいとき、データが各SaaSに散らばっていると、全体像を見るのが難しくなります。
これを解決するには、各SaaSのデータを一か所に集約する仕組みが必要です。集約・可視化のためのSaaSを使うか、軽量なデータ基盤を併用する。完全にSaaSだけで横断分析まで賄うには、工夫が要ります。
複数SaaSを賢く組み合わせる
SaaSで完結を目指すなら、個々のSaaSの機能だけでなく、組み合わせ全体を設計する視点が重要です。連携しやすいSaaSを選び、データの集約先を決め、全体として無理なく回る構成にします。
バラバラに便利なSaaSを導入するのではなく、全体像を描いてから選ぶ。この設計の視点があれば、SaaSの組み合わせで多くのことが実現できます。組み合わせの妙が、完結度を左右します。
SaaSと自前構築のハイブリッド
SaaSで賄えない部分だけを自前で補う、ハイブリッドな構成も現実的です。大部分はSaaSで手軽に、独自要件の部分だけ最小限の自前構築で対応する。これなら、手軽さと柔軟性を両立できます。
「全部SaaS」か「全部自前」かの二択ではありません。SaaSを基本としつつ、足りない部分を補う。この柔軟な発想が、中小企業に最も適したデータ基盤の形になることが多いものです。
SaaS選びで確認すべきこと
SaaSを選ぶ際は、機能だけでなく、データの取り出しやすさ、連携のしやすさ、料金体系、サポートを確認します。とくに、いざというときに自社のデータを取り出せるかは重要です。
データを取り出せないSaaSに依存すると、後で別のサービスに移りたくなったとき身動きが取れません。自社のデータは自社で持ち出せる、という点を確認しておくことが、長期的な安心につながります。
まずSaaSで始めてみる
中小企業のデータ基盤は、まずSaaSで始めてみるのが現実的です。小さく試し、SaaSで賄える範囲と、賄えない部分を実際に確かめる。机上で完璧な構成を考えるより、使いながら見極めるほうが確実です。
SaaSの手軽さを活かして小さく始め、限界が見えたら自前構築やハイブリッドを検討する。この順序なら、過剰な投資を避けながら、自社に合ったデータ基盤を育てられます。まずSaaSから試してください。
SaaSでデータ基盤を完結する際のチェックリスト
- 自社の業務がSaaSの標準で回せるか
- 独自要件が本当に必要か問い直したか
- 選ぶSaaSが他のサービスと連携しやすいか
- 各SaaSのデータを集約する仕組みがあるか
- 自社のデータを取り出せるSaaSか
- SaaSで足りない部分の補い方を考えたか
よくある質問
Q. SaaSだけでデータ基盤は完結できますか。
A. 多くの部分は賄えますが限界もあります。標準的な業務ほど完結しやすく、独自要件が多いと自前の補完が要ります。
Q. SaaSの魅力は何ですか。
A. 初期投資が小さく、すぐ使え、保守を事業者に任せられることです。人手の限られる中小企業に手軽な選択肢です。
Q. SaaSの限界はどこにありますか。
A. 独自要件への対応、連携の壁、データの一覧性です。既製品ゆえの制約があり、横断分析には工夫が要ります。
Q. 独自要件があるとSaaSは使えませんか。
A. その要件が本当に独自である必要があるか問い直してください。業務を標準に寄せられればSaaSで賄えることも多いです。
Q. 複数SaaSの連携はどうしますか。
A. 連携しやすいSaaSを選ぶことが基本です。連携が貧弱だとデータが孤立し手作業が発生するため、選定時に重視してください。
Q. 横断分析もSaaSで可能ですか。
A. 各SaaSのデータを集約する仕組みが必要です。集約・可視化のSaaSを使うか軽量な基盤を併用する工夫が要ります。
Q. SaaSと自前構築は併用できますか。
A. できます。大部分はSaaSで手軽に、独自要件だけ最小限の自前で補うハイブリッドが中小企業に適することが多いです。
Q. SaaS選びで何を確認しますか。
A. 機能に加え、データの取り出しやすさ、連携のしやすさ、料金、サポートです。特にデータを取り出せるかが重要です。
Q. データを取り出せないと何が困りますか。
A. 別のサービスに移りたくなったとき身動きが取れません。自社のデータを持ち出せることが長期的な安心につながります。
Q. どう始めるのが良いですか。
A. まずSaaSで小さく試し、賄える範囲と限界を確かめます。限界が見えたら自前やハイブリッドを検討する順序が確実です。
まとめ
中小企業のデータ基盤は、多くの部分をSaaSで賄えます。ただし独自要件への対応、連携の壁、データの一覧性という限界があり、横断分析まで完結するには工夫が必要です。
連携しやすいSaaSを組み合わせ、足りない部分を自前で補うハイブリッドが現実的です。まずSaaSで小さく始め、限界を確かめながら自社に合った構成を育ててください。
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